三月の雪は、きみの嘘
教室に戻るころには、昼休みも終わりの時間にさしかかっていた。


なんだか入りづらくて、廊下の窓からの景色を見ていた。

たくさんの声が私を通過していくたびに、自分がひとりだということを強く感じる。


……マイナス思考はやめよう。


暗い考えを振り切るように、外の風景に集中する。

十年ぶりに戻ってきた町は、子供のころの印象とは違っていた。

あのころは果てしなく大きく見えていた小学校も駅前通りのアーケードすらも、体が大きくなったからなのか昔の印象よりは小さく見えた。

でも景色に見覚えがあっても、転校する直前の記憶はほとんどない。

小学校一年生といえばまだ幼い時期だからか、切り取った写真のように断片的にしか残っていなかった。


それは、学校帰りに見た空の茜色だったり、友達の団地の階段をのぼる途中で見た景色だったりと、なんでもないような日常の風景ばかりだった。



さっき教室で見た雲が、空でちぎれてふたつになって流れている。



前の転校のときも、同じように空ばかり見ていたっけ……。


転校するたびに人との縁を切られ、また一からやり直しをしている。



砂の城が波にさらわれて、泣きながら作り直しているみたいに。
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