三月の雪は、きみの嘘
午後の授業が終わると、私はすぐに席を立った。

『バイバイ』を言う相手もないまま、旧館へ急ぐ。

私がいる教室は、新館の二階。なんでも、一年前に建ったばかりらしい。

旧館へは一階の渡り廊下を渡っていくしかないので、二階にある教室から階段を使って一度降りてから、旧館へ。

もうほとんど使われていないけれど、まだ音楽室や職員室は旧館側にあった。

旧館は名前の通り、さすがに古さが際立っている。

照明すらも薄暗く、廊下も狭い。湿気がこもっているようで、気持ちまで暗くなってしまう。

使われていない教室を抜け、階段をのぼった一番奥が、私の目指す場所。

まだ日中だというのに、奥に行けば行くほどに光はその存在を弱めているようだった。

【図書室】と書いてあるプレートも、木でできていて古ぼけている。

重い引き戸を開けて中に入り、電気をつける。だれもいない図書室は、本の匂いが充満していて体からふっと力が抜けた。

図書室にはたくさんの棚があって、その間を歩くだけで心から落ちつけた。

教室では知らない間にこわばってしまう体が癒される気がする。

高校二年生の新学期に転校してきた私は、委員会を決めるホームルームで、迷わず図書委員に立候補した。


それは、私が昔から本の虫だったから。



時間さえあれば本を読んでいたし、小学校から図書委員しかしたことがない。
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