三月の雪は、きみの嘘
小さくて古い図書室だけれど、読みたい本はたくさんあったので、転校した日から毎日通っている。

図書委員には当番があって、各クラスが持ち回りで夕方の貸出受付をしている。

だけど、実際に委員の人が来ているのを見たことがない。

暗黙の了解で、皆が勝手に本を持っていくのが通例のようだった。

棚からめぼしい一冊を手に取ってみると、ずっしりとした感触に心が弾む。

この重さと紙の匂いが昔から好きだった。

本は、開いた瞬間から私を別世界に連れていってくれる。

物語を追う時間はぎこちない現実も息苦しさもなく、私にとって安らげる場所だった。

棚を回って、二冊の本を手に取ってカウンターに戻ってきた。

昼休みに借りていったのか、一枚の貸出カードが無造作に置かれていたので、それを所定の場所に置いて貸出帳に転記する。

それから、カウンターのイスに座って、持ってきた本を吟味するように眺めた。

どちらも古そうな本だ。


「まただ……」


本の表紙をめくったところに、どちらも【寄贈 町立図書館】と朱色のスタンプが押してあった。


選ぶ本のほとんどに、このスタンプが押してある。
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