三月の雪は、きみの嘘
「昔、よく行ったな」

今はもうなくなってしまったと、お母さんが言っていたっけ。

小学一年生のころは、しょっちゅう町立図書館に行って本を読んでいた。

学校の図書室じゃ物足りなくて、毎日のように通っていた記憶がある。

なつかしさに思わず笑みがこぼれてしまうけれど、それはぼんやりとした蜃気楼。

町立図書館の外観は覚えていても、中の構造や本棚の景色などはぼやけていて見えない。

拓海くんのことも、昔から知っているような気がしたけれど、やっぱり思い出せない。

彼に昼間言われた『ウソばっかつくのって疲れない?』という言葉が心にひっかかって、気持ちが重くなる。


なぜ拓海くんは、私がウソをついているとわかったのだろうか。


これまでだれにも知られたことはなかったし、最近の私ですら、日常会話の中で無意識にウソをついてしまうことを気にしなくなってきていたのに……。

あのときの彼は、まるで責めるような目をしていた。

一度首を横にぶんぶんと振ってみる。

せっかくの読書の時間なんだから、もう忘れよう。

「今日はどの本を借りようかな」

六時の閉室時間までは、選んだ本をここで読んで、続きは家で。


それが私の日課になっている。
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