三月の雪は、きみの嘘
カウンターに持ってきた古い本は、ともに青春小説のようだった。

あらすじを見比べても決めかねる。

「ふむ……」

背もたれにもたれて視線を上げた瞬間……。

「え!?」

思わず声が出ていた。

視線の先にある机の一番奥にだれかが座っていたのだ。

別に図書室だから、だれがいても不思議はないのだけれど、大抵が昼休みに来る人ばかりで、夕方に自分以外の人間がいるのは初めてのことだった。

さらに、その顔を見て驚いた。


拓海くんだったからだ。


「なんでここに……」

片肘をついてじっと読んでいるその顔に、なんだか違和感を覚えた。


教室で見た彼とは雰囲気が違っているような気がする。


しばらく観察していて気づいた。

違和感の正体は、拓海くんがかけていたメガネだった。

今どき珍しい太い黒縁のメガネで、彼を幼く見せる。

教室ではしていなかったよね。

ううん、ひょっとしたら授業中はしていたのに気づかなかっただけかも。


存在に気づいたのが今日だったから、知らなくて当然だけど
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