三月の雪は、きみの嘘
やがて図書室を包んでいた光はオレンジ色に染まり、頼りない蛍光灯の明かりが主張し始める。

一冊選ぶつもりだったけれど、いつもと違う状況にそんな気にもなれず、そっと席を立ち、棚に本を返しに行った。


「どうしよう……」


壁の時計は、あと二十分で六時になることを教えている。

決まりでは、十分前になるとそろそろ閉館であることを伝えなくてはならない。

今日は当番ではないから放っておけばいいものを、私は律儀に毎日閉室作業をしていた。

急に緊張してきた私は、ウロウロと書庫をさまよいながら考える。

普通に言えばいいのに、クラスメイトというだけで話しかけにくい。

それに、無口っぽい人だったし。


さっきみたいに冷たくされたらどうしよう。


迷っているうちにどんどん時間は経ってゆく。

昼間はあんなにゆっくりとしか進まないくせに……。

わけもなく咳払いをして、とにかく普通に伝えよう、と自分に言い聞かせる。

顔を見ないようにすれば大丈夫なはずだから、後ろから話しかけよう。


頭の中で言うことを整理し、ようやく自分にOKサインを出す。
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