三月の雪は、きみの嘘
決心がにぶらないうちに書庫の迷路から脱出して拓海くんのいた席を見た私は、「あ……」とつぶやいて足を止めた。

もうそこに拓海くんの姿はなく、主をなくしたイスがきちんと元のように納まっているだけだった。


「帰っちゃったのか……」


せっかく覚悟を決めた心の行き場を持てあます。

時計を見れば、いつの間にか六時を過ぎていた。

カーテンを閉めてから、カバンを取りにカウンターへ向かう。

すると、カウンターには一枚の貸出カードが置かれていた。

どうやら拓海くんがさっき読んでいた本を借りていったらしい。


カードには、お世辞にもきれいとは言えない文字で、【大重拓海】と書いてあった。











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