三月の雪は、きみの嘘
スーパーの袋をぶら下げてアパートに戻るころには、すっかり町は夜の黒に浸っていた。

春といえども、まだ寒さを感じる風に身震いしながら部屋のカギを開けると、制服からジャージに着替えて夜ご飯を作る。

私は、中学生のころから無理やりお母さんから料理を教えられていた。

今となっては、お母さんなりの離婚の予告だったのかもしれない。

おかげで、いつしかお母さんの帰宅前に料理を完成できるまでに上達していた。

味はまぁ可もなく不可もなくってレベルではあるけれど。


「我ながらよくできた」


最近、ほんとに多くなったひとりごとをわざと大きな声で言うと、メインである豚肉と春キャベツの炒め物をテーブルに置く。

それと同時に、カンカンカンと階段を鳴らす音が聞こえた。

このアパートは、部屋の壁も薄ければドアまでも薄いのだ。

「格安なのはいいけどね」

そんなふうにつぶやいていると、「ただいまぁ」と、お母さんが夜の風と一緒に部屋に入ってきた。

「いい匂いがする!」


テンションの高いお母さんはヒールを脱ぐと、そのままテーブルに座ろうとする。
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