三月の雪は、きみの嘘
「学校、どうなの?」

一瞬、ラップを外している手を止めてから、私は笑みを作る。

「大丈夫だよ。すごく楽しい」

「昔の友達とかもいたりするの?」

浅漬けのきゅうりを口にほうり込みながらお母さんが聞くので、にんまりと笑ってみせた。

「うん。なつかしの再会しちゃったよ」

「へぇ。だれ、だれ? お母さんの知ってる子?」

身を乗り出して聞いてくるので、

「ノンちゃんって覚えてる? あの子さ、すごく大人っぽくなってるんだよ」

と、自慢げに口にした。


……私とは話をしたことないけれど。


「あとさ、公孝くんっていじめっ子いたじゃん。あいつもすっかり大人でさ」


……私とは話をしてくれないけれど。


心の声とは別の言葉をスラスラと、まるで別人の話を想像してしゃべってしまう。

むなしさを見ないようにして言うと、お母さんは安心したように肩の力を抜いてお茶をすすった。


「じゃあ、新しい友達もできたのね」
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