三月の雪は、きみの嘘
翌日は、重い気持ちにぴったりの曇り空だった。


昨日と違うのは、無意識に拓海くんばかりを見てしまうこと。


図書室で夢中になって本を読んでいた姿は鳴りを潜め、やる気のなさそうな顔と態度であまり声を発していなかった。


だれかが話しかけてもうなずいたり短く返事をする程度で、さすが“クール男子”と呼ぶにふさわしい立ち振る舞い。


そして、やはりメガネはしていなかった。


だからか、図書室とはまったくの別人のように思える。


「……って、これじゃあストーカーみたいじゃない」


小さく声にして立ち上がると、私はカバンを手に図書室へ向かう。


なんとかやり過ごした一日を、本たちに癒してもらうのだ。


「あの」


苦痛な時間から解放された気分で教室を出ようとしたところで、後ろから声がした。


振り返ると、そこにはまたしても学級委員が立っていた。

「はい」

「あの……。急いでる?」

「え?」

マジマジと見ると、照れたように顔を横に向けてしまう。

「急ぎの用じゃないんだけど、図書委員の当番があって」


今日は本当に私の当番の日だった。


とはいえ、閉室までに行けばいいのだけれど。
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