三月の雪は、きみの嘘
モヤモヤしたまま図書室の前に行くと、それをぶつけるように力まかせに扉(とびら)を引いた。


――バンッ。


思ったよりも大きな音に驚いたけれど……。

「うわ!」

中からもっと大きな声が聞こえて、そっちのほうにびっくりした。

「あ……」

目の前にいたのは、またしても拓海くん。

驚きのあまり、ずれたメガネの奥で目を丸くしている。

「ご、ごめんなさい。人がいるとは思わなくって……」

言い訳をしながらも、先ほどのやりとりを思い出して苦い気持ちが込み上げてくる。


最悪だ。


たぶん……いや、絶対に拓海くんは私が嫌いなはず。

さっきは自らからんでしまって、さらにはこの状況。

ひょっとしたら怒られるかもしれない。


……が、予想は見事に外れた。


ずれたメガネを直した拓海くんがニカッと笑ったのだ。

まるで景色が一変したかのようだった。


え? どうしたの……?


ヘンな話だけれど、彼の白い歯を初めて見た。
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