三月の雪は、きみの嘘
「いや、こっちこそ電気もつけずごめん。図書室でだれかに会うの、久しぶりだからさ」

そう言うと、私のほうに手を伸ばしてきたので身を固くした。

しかし指先は、私の右側にあるスイッチをぱちんと押した。

次の瞬間、室内に電気が灯る。

「これでよし」

拓海くんはひとりでうなずくと、軽いステップで奥の棚へ歩いていった。

私も慌てて扉を閉める。

気づくと息が上がっていた。

気まずい関係のクラスメイトとふたりっきりなんて、心臓に悪すぎる。

だけど拓海くんは、もう私の存在なんてなかったかのように棚をぶらぶらと徘徊し始めていた。

ときおり手を伸ばして本を取っては、「ちょっと違うな」なんて、ぶつぶつと言っている。

クールで短い言葉しか発しない教室の拓海くん、そして今ここにいる上機嫌な拓海くん。


明らかにキャラが違うんですけど……。


いや、本当に別人なのかも!?


しかしその疑問は、カウンターの返却ボックスに置かれた本を見て解消される。
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