三月の雪は、きみの嘘
――カタッ。
突然、音がして、思わず体が飛び上がる。
「ごめん。今度は僕のほうが驚かせちゃったね」
その顔を見て、さらに驚く。
すぐ目の前に立っている拓海くんがニコニコと笑っていたからだ。
「あ、いえ……」
彼の顔をマジマジと見上げる。
メガネをかけているけれど、やはり同じクラスの彼で間違いない、と思った。
が、低音な声も鋭いまなざしもなく、ほがらかな空気をかもし出している。
どういうことなんだろう。
「熊切文香さんだよね?」
「え?」
なぜか目を丸くしてうれしそうに尋ねてくる拓海くんに、驚きを隠せずに口をぽかんと開けてしまう。
「だから、熊切さんでしょ?」
矢継ぎ早にふってくる質問に、声が出ないままゆっくりうなずく。