三月の雪は、きみの嘘
「なんでよ」

「そういうルールだから」

抵抗する私に、当然のように言う拓海くん。

なんだかわからないけど、このままだと堂々巡りになりそうで、言われた通りにうつむいて目をつぶる。

「じゃあ、数をみっつ数えて」

「数?」

「うん。そしたらヒントをあげる」

暗闇に聞こえる彼の声に従う理由はないのに、まるでそれが当たり前のように、私は数えだしていた。


それは、拓海くんの言った『ヒント』の単語が気になるからにほかならない。


「いち、にい……さん」

「はい、目を開けて」


戻った視界に映るのは、差し出された一冊の本。


古そうな本の表紙が見える。

「こっちは文香さんの」

「え?」


名字ではなく名前で呼ばれたことに気づいていても、少し黄ばんだ表紙に意識が集中していて言い返せなかった。
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