三月の雪は、きみの嘘
固まっている私に、拓海くんはふわっと耳元に顔を寄せて言った。

「これ、読んでみて。きっと驚くから」

「この本を?」

「そう。さっき言ったでしょ。これは、なんでウソをついてしまうのかを解決するために必要なもの。言わば、“真実を導くヒント”だよ」


まだそばにある顔が近すぎて、直接頭の中で聞こえているみたい。


「この本が?」

「そう。これから僕が出すヒントを解いていけば、ちゃんと文香さんが納得できる答えにたどり着くから」

顔を上げた拓海くんは、自分が借りた本をカバンに入れると、「じゃ、また月曜日に」と手を振り背中を向けた。

「え、ちょっと」

私の声にも振り向かずに図書室から出ていってしまう。

目の前には、ぽつんと置かれた本だけが残った。


「……どうすんのよ、これ」



ため息とともに、六時になった。
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