どきどきするのはしかたない
課長…、まだ居るかな、追いつくかな。
下に下りて外に出た。右、左、見た。…課長の帰る方に行けばいいか、反対方向には行ったりして無いよね…。
走った。
課長…、課長、どこに。
あ、携帯。
【課長、今どこですか?私、追い掛けています】
…課長、…怒って返事くれないかも…。私、さっきの態度、謝ってもないから。
ブー、…。
【ここだ】
あ、え?どこ?…ここって?
携帯を手にぐるぐる回って見た。
…課、長。どこに…。
居た。反対側の歩道の先に居た。戻って来てる。
RRRR…。
「課長…」
「最近の涼葉は厳しいな。会ってもくれない、話も出来ない。いくら冷却期間だと言っても、直ぐ解決しておかないといけない事だってあるだろ?」
近づいて、道を挟んで向き合っているのに、もどかしい。
先の横断歩道を目指して走った。
携帯を両手で握りしめ、信号が変わるのを待った。
課長も横断歩道の先に来て居た。
「厳しいとかじゃないです。目を背けたんです。課長の口から聞くのが恐いから逃げたんです」
「何が恐い。何も恐い事なんかないじゃないか」
…あ、もう。…もどかしい。課長。
車の信号が赤になった。
歩行者信号が青に変わる前、待ちきれなくて駆け出した。
…あ、課長。
「課長!さっきの…、あの女の人は誰ですか?私、見たんです。課長がその女の人と抱き合っているところ。声、掛けられなくて、知るのが恐くて、だから…逃げたんです」
「…涼葉。信号が変わる。取り敢えず渡り切ろう。それが先だ」
横断歩道の真ん中で腕を掴んで必死で課長に訴えた。課長は凄く落ち着いていた。
「あ、……ごめんなさい。…こんなど真ん中で、でも課長」
会ってしまったら、私…落ち着いてなんかいられない。恐い。
「フ、涼葉らしいのかな。こっちに渡るぞ」
「…はい」
手を引かれた。早足で渡りきった。
「俺の部屋に行く。話はそれからだ」
え、あ、…。いきなり…ドキドキする。
「…はい」
あ、課長…、指を絡めて手を繋ぎ直した。
「嫌か?今、こんな事されてもって」
あ…。そんな、…私。首を振った。
「…明日は休みだ。俺の休みは涼葉のものだろ?」
「あ。……課長」
今の状態でも、…それでもいいという事なのかな。