どきどきするのはしかたない

「資格?…。聞かなくて、有耶無耶なままでいいのか?」

仕方ない。
課長…小さく資格って、呟いた。

「はい」

「俺なら嫌だな。解らないモノを信じるっていうのは無理な話だと思う。
俺の場合、抱き着かれただけだ。それも今夜の一度だけの事。この言葉を信じて貰うしか無い。証拠は無いから。
それが信じられないと思われるようになっているなら、俺は駄目だと思う。
自分を疑うような人とは一緒には居られないだろ?」

全ての言葉が全部自分に返って来ている。
グサグサとこれでもかと胸に刺さる。私は…事実、裏切っている。

「課長…私は…、資格も無いのに…私はヤキモチを妬きました。…私は、課長に話していない事があります。
私は…、課長以外の人と…」

「言うな。…言わなくていい。俺と同じような言い方をすればいいじゃないか」

「え?」

「信じていてくださいと、言ってくれるだけでいいんだ。俺の事が好きなら」

…課長。今の…それは、…どういう意味で言ってるのです?…。例えだと思います、思いますけど…深読みしてしまいます。
課長と結婚相手の人との間には、本当は何かあった?…だけど言わない、無かったんだ、だから、信じろって、そうも取れる…。今のはそんな言い方ですよね?
…今夜の事じゃ無い。最近はもう無かったとしても…私と関係がある前に…あったって事?…それも考えられる。
お付き合いの過程で…結婚する相手なんだから、徐々に、普通の恋人のように進んでいったかも知れない。無いとは言えない。好きじゃ無くてもいいから…。結婚するんだからって。夫婦になるんだからって…なりゆきでいつかは関係は持つ。…だろう。…持っていた。
だから…、相手の人は余計課長の事が忘れられなくて…、強く執着したんじゃないだろうか。
私には危害は与えないと約束しても、…課長とは…。
あぁ、もう、嫌。…こんな妄想は…自滅する元。

…それを私には正直には言わないって事?…。
私が、こんな子供の考えしか出来ない人間だから、全て、真実を知ってしまうと堪えられなくなるから?…。

自分とつき合う前の事だ、と、上手く流して割り切れないから?…。
馬鹿みたいに、恋愛に関して純粋培養した考えしか出来ない人間だから?
課長に対して、綺麗な考え方をしているから?

好きで憧れている人だから。
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