どきどきするのはしかたない
「…駄目だ、言っては。言うなと言っている。涼葉が一緒に居られなくなるだろ?」
「でも、…苦しいです、苦しいから。課長…ごめんなさい、ごめんなさい」
「大丈夫だ。苦しいのは今だけだ。…薄れていくから大丈夫だ。今の感情に流されないでくれ。俺の言っている言葉に従ってくれ…頼む涼葉…」
ん、…。課長。また唇が触れた。
「やっと今夜、もう二度と何もしないと誓いに来て、終わったんだ。
それなのに、何もかも無くしてしまうつもりか?
あんな…、涼葉にしてみたら、謂れの無い酷い仕打ちをされて…痛い思いをして、傷痕だってやっと消えたんじゃないか…」
課長はまだ私の痣が消えた事を本当は知らない。
それだけ身体の事、デリケートに気遣っていてくれた。
「知っていると言っている…。このままでいいから。
解っている、って、相手に言われる、そういう風に言われたく無い、そう考える涼葉の考え方、今はその考え方、しないで欲しいんだ…」
私の性格…いつ把握したんだろうか。いいから解ってるから、って言われるのは嫌で、解ってくれていても、こっちから言いたい、そんな性分なのだ。
「言っては駄目ですか?」
「駄目だ。…フ。もう言ったと変わらない…、同じだよ」
「え?」
「ここまで、何度も何度も言ってもいいかって言われたら、もう、言ったと同じだ。だから、俺はもう聞いた。…涼葉の口から聞いたから」
「課長…」
「この事は終わりだ、いいな?納得がいかなくても今はいいから。口に出しては絶対駄目だ」
「…はい」
課長…。課長…。
「うん。…涼葉…今夜は泊まるよな?」
髪を撫でられた。
「あ、…はい…」
「んー、じゃあ、一緒に風呂に入ろう。身体、俺が洗うから」
「え…それは、…恥ずかしいです…」
いきなり…。
「痣…どんな具合か確かめたいんだ。変な意味じゃない。傷痕だって残るようなら綺麗に治るように治療したいし」
「傷痕はまだ、擦れた傷とか、擦りむいた傷はまだ瘡蓋が剥がれただけで薄茶色く残ってます」
私はいつも傷跡が中々消えない。痣もまだほんのりと解る。
「それも…何もかも…、全部、確認したいんだ」
痣や傷痕が見たい…もしかして、…嫉妬なんだろうか。傷のある身体で私は七草さんと…。
「…解りました。あまりじっくりは見ないでくださいね…」
「返事は出来ないなぁ」
「課長〜…」