どきどきするのはしかたない

「…あの、…好きなんですか…」

「ん?」

「…キス」

…あ、馬鹿馬鹿、何聞いてるのよ。

「…フ。…好きだよ。キスに限らず、色々好きだ」

あ、何、…馬鹿な事、聞いちゃった。

「押し返したくせに、本当はしたかったのか?」

「…違います。結果としてはしようとしてしなかったですけど、何て言うか、七草さん…全体的にあっさりしてるかなと思って」

もう…、言わなくていい事を言う意味があるだろうか。

「どうしたんだ…寂しいのか?」

「え?」

「んー、俺としたら、逃すのは残念だけど。…駄目だぞ。俺はもう愛徳の薬は止めたって言っただろ?」

…。

「そんな…そんなつもりで言ったんじゃないです。ただ…前とは、雰囲気というか、七草さん、違ってきたから」

…。

「だから、言ってるだろ?もう薬にはならない、違って当たり前だ…俺を虐めるな」

…虐める?…何故?…意味が解らない。

「もう部屋に戻れ。俺も温かい内にこれを食いたいし。…薬にはならないと言いながら、俺もまだ中途半端なんだ。だから愛徳に迫られると困るって言ってるんだ」

「あ…、わ、私、せ、迫ってなんかないです!」

「フ、そうか?いつもいつも、わざと鍵を開けてあるのかと思ったけど」

「はぁあ?そんな訳ないじゃないですか。ただ忘れているだけです。その開いてるドアから勝手に入って来てるのは七草さんでしょ?」

「フ、だから、勝手では無い。ベランダにしろ、玄関にしろ、開いてたら入るぞって言ってあるだろ」

「それが可笑しいんです。…私、ベランダでゆっくりボーッと出来なくなったじゃないですか…」

「ボーッとすりゃあいいじゃないか」

「…だって、気を抜いていたら、いつ七草さんが跨いで来るか解りませんから」

「勝手にやらせておけばいいだろ?」

「え゙?他人事みたいに言って。七草さんの事を言ってるんですよ?」

「だから好きにやらせておけば?」

「それが困るって話なのに…」

「嫌なら相手にしなけりゃいいんだよ」

「相手にしないとかそんな…難しい、です」

第一、精神で相手にしなくても、力では…負ける。強引にするじゃないですか。

「だろうな。俺が言ったら、こうしてご飯も作ってしまうからな」
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