どきどきするのはしかたない
「…もう、戻ります」
う、精神も負ける…。
「ああ、もう、戻れ。課長もそろそろ帰ってるだろ。元気が欲しけりゃ、源は課長だろ。落ち込むのも、浮き上がるのも、今の愛徳は全部課長だ。
通常のモチベーションに戻りたいなら課長に連絡してみる事だ。通常どころか…それ以上に上がるか。
あぁ、もう、すっかり冷えてしまったじゃないか。じゃあな、おやすみ」
あ、…。
「おやすみなさい…」
…ドアの取っ手に手を掛けながらも、まだ入らない。一瞬、見つめられた。
「…フ…早く、戻れよ。愛徳の分も冷めるだろ」
「…はい」
部屋の前に戻り、先にドアを開けて入った。
中に入りドアにもたれた。
はぁ、何だったんだろう。…どうかしている。
…鍵、しておかなくちゃ。隣でドアの閉まる音が微かにした。
…こういう事なのよね。作ってくれと言われたら作ってしまう。結果、お陰で自分だって食べられる。
野菜ジュース…腕に通されたから当たり前みたいに受け取ってしまったけど…。どうしてこんなに気遣ってくれるのか。…。
あ、クス…レシート、入ってる。買って受け取ったら入れるのが癖なのかな。こんなところは、人に渡す物でも気にしないのかな。…私だから気にしないのか。
あ……え?これは、どういう意味…。
黒く透けていたから、また裏に何か書いてある事は解っていた。ちょっと濡れて滲んでいたが読めなくはなかった。
小さな文字でレシートにびっしりと書き込まれていた。模様かってくらい細かくほぼ真っ黒だった。
『信じている人間が言う言葉は信じる。そう決めたら、疑問に思っても信じる事を貫き通す。
結果、それが嘘だと解っても、態度や言葉に出さ無い自信があるならやっていけるだろう。
自分とは関わりが無かった時の事なんて、所詮、知らなければ悩まずに済む事だ。考えたってどうにもならないモノだ。自分と一緒に居る期間だけがその人の人生じゃない。自分の知らない間の人生だってその人の人生だ。受け入れる、受け流すは凄く大事な感情のコントロールだ』
…はぁ、…本当、月曜の課長との会話、聞いてたんじゃないかとさえ思ってしまう。
これは一見惑わせているように取れなくもないけど、…違うと思う。しっかりしろって…言われてると思う。
何かを企んでいるような悪人じゃないなら…、好きな人の事は信じる事、って意味だ。
何かが発覚しても、…構わないでは無いけど、それでもやっていけるくらいの思いが無いと、人とはつき合えないって事だ。
んー、客観的には解る。私も他人に対してなら、こんな風に意見出来る意識はあると思う。
でも、それが自分ってなると…何かあると、ワーッてなってしまうのが普通よね。
…私とは知り合って無い時の事を言っているんだ。
問題が出て来ても、諦めず信じ続ける覚悟が必要って事…。
…。