どきどきするのはしかたない

【実はもうマンションが見えるところまで来ている】

えー、って動揺している間は無い。

【大丈夫です】

あくまで字面は平然と、返信は早く、ね。

【そうか、もう着くぞ?】

ちょっとだけ寄るって、その言葉通りなの?
あぁ…、よく解らない。
だけど玄関までで、顔を会わせて、じゃあって直ぐ帰る?
わー、どうしたら…。

【着いた。笑。押すぞ?】

ピンポン。
あ、え、もう?上に来てたんだ。


「はい!…はい、…課長」

「元気だな。はぁ、涼葉…疲れたから、顔を見に来た。今日は全然、俺の事、見てくれてなかっただろ?」

「課長…」

何となく解ってたんだ。という事は、課長は私を見ていたって事…。

「やっぱり、一日中機嫌を損ねていたのか?はぁ、…涼葉」

玄関に踏み込んだところで片手で引き寄せられ抱きしめられた。

「俺が悪かったな。んー、何も要らない。こうして涼葉が居てくれるだけでいい。疲れも飛ぶ…」

「課長…」

何だか、絶妙なタイミングですね。私なんて駄目だと自棄になっていたところだったのに。
心の声が聞こえたのかな。誰かに行けって言われたんですか?
暫く抱きしめられていた。
私、…上がりますかと言った方がいいかな。

「…課長」

「涼葉、ご飯は済んだのか?」

「あ、いえ、そうだ、まだ、…食べようとしていたところです」

「だったら、一緒にいいか、買って来たから」

課長、そう言えば、デパ地下の袋を提げてる…。帰ってからそれを食べるつもりで買ったのですね。

「はいどうぞ」

「一人で食べても何だか、味気無いからな」

「…はい」

色々、気の利いた事、言えたらいいのに。それに伴うように、出来たら言えるのに。どっちも上手く出来ないなんて…。役立たずだ。

「ん?では、邪魔するぞ?」

袋ごと受け取った。
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