どきどきするのはしかたない
「…アドバイスのお礼だ。それに…わざと俺を使って試しているのか…。そっちの気は知らないが、俺は好意があると知ってる相手だからな」
「…違います」
何が違うんだろ。衝動で抱きしめた、この感じ。
「だったら、これは…脳の誤作動だ。愛徳の脳細胞が、俺の事をまだ薬だと思っているからだ。それだけの事だ。
誰かに慰めて欲しくて、優しくされたいだけだ。俺に、迷った理由を話しているからだろ」
「これ…好きって事とは違うんですか…」
理性の利かない本能的なモノ…。私は七草さんにいつもこんな事を…。
「…はぁぁ。それは知らない。第一、俺に聞く事じゃない。聞かなくても普通自分の気持ちは自分で解ってるモノだ」
…解らないから聞いてるんです。好きな人が居ても、別の人の事が変に気になる事ってあるんですか?
「…何だ?」
「…何でもありません」
「何でもありませんは、何でもあるんだろ?」
「え?でも、これは、七草さんに聞いても駄目だって言われました。聞いてくれないじゃないですか」
「相談相手に尋ねる内容じゃないからだろ?…ていうか、…はぁ」
「さっき言われました、…それは解ってます」
「はぁ、…何なんだ…」
「好きな人が居ても…、別の人の事がもっと気になる事ってあるんですか?って、聞こうとしました…」
「…誰の事だ。はぁ、…その答えは愛徳でも解る。自分の事として考えるのが難しいなら、誰か知らない人間ででもいい、例えて考えて見れば簡単に解る事だ」
…。
「ある事ですね」
「…そうか」
「ある事だと思います。でも、答えを出すのが恐い事でもあります」
「…そうか。もう、いいか。部屋に帰るから」
…回していた手を解かれた。
「じゃあな。俺が出たら、直ぐ鍵しろよ。ボーッとぼんやりするな?危ないから。解ってるか?直ぐしろ、忘れるなよ?」
「…はい」
落としていたお皿を拾い上げて渡してくれた。