どきどきするのはしかたない
・一難去って?または無し

「………私、決めかけている事があるんです」

もう、こうして口に出したという事は、そうしようと決定してるって事だ。内心は決まっている。私はそういう人間だ。

「ん?あれから考えてたのか」

「今までの時間、ずっとでは無いです。まあ…お風呂の中では漠然と。じゃないと、逆上せる程浸かっている事になったら危ないので。だから、後は出てから考えてました」

「そういうところだよな…。問題を前にしても、冷静に切り替えて考える。それが恋愛だと、いいような悪いようなに、なるんだけどな…」

「え?あ、そういう事ですね。好きって事を分析して好きになろうとしてるから駄目なんだと思います。きっちり型に嵌めないといけないと思ってしまうから…」

…これは好きという感情を無しにしてしまうに等しい。

「…だから…、理屈でどうとかでは無く、信じられると思って好きになった人間は、信じ通せって言ってるだろうに…」

それはつべこべ言わず、課長をこのまま信じろと言うアシストですか?…。

「そう思おうとしても、ちょっとの解らない事が、やっぱりどうしても気持ち悪いんです…」

そんな解らない曖昧な部分、誰にだってあると思う。その解らない内容によると思うけど。曖昧のまま飲み込めない…結果、不信に繋がる…。もう繋がってる。

「…そうか。で、決まりかけてる事って?」

「そこは七草さんには話しません。これは私の事ですから。七草さんは、もう、薬として利用してはいけなくなりましたから。そうですよね?」

「ああ。もう薬にはならない」

「はい。じゃあ、何になるんですか?」

「それは俺の都合でだから、関係無い。…言わない」

「ですよね」

…。

「もう少し離れてくれます?」

「あ、おう、解った」

…。

「暑いな」

「暑いです」

…。

「ベランダのサッシ、誰かさんのせいで開けられないからですよ。
私、エアコンはあまり好きではないので。普段、夜は使いませんから。…扇風機、買おうと思ってます。
お水、飲みますか?持って来ます」

トンとソファーから下りてハーフケットを巻き付け直し冷蔵庫に向かった。

ふぅ…参ったな…。
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