どきどきするのはしかたない
「愛徳…愛徳、起きろ。会社に行くだろ?起きろ、愛徳」
「…ん、…は、い」
「まだ早いけど、俺は部屋に戻るから。二度寝、するなよ?」
おでこにキスされた。あっ。
「フ、おはよう、起きたな」
「はい」
「じゃあな」
「はい」
昨夜、玄関先で意を決して告白をして、腰が抜けそうな甘いキスをされ、私はベッドに運ばれた。そして今だ。
…何も、神に誓って何もしていない。七草さんの大きな胸に抱かれたまま眠った。
それだけだ。
…はぁ、こんな甘い朝は初めてかも知れない。心でそう感じていた。
課長と話をしないといけない。
それは早い方がいい。
朝から個人的な業務連絡だ。
早い時間だとか、配慮はしない。
【おはようございます。お話したい事があります。時間を作ってください】
返事は来なかった。
それが、いつもの課長だ。
用件は伝わっている。あとは、その時まで待つだけ。…私はいつも受け身だから。
「おはよう、涼葉。ん?何だか顔の色艶が違わない?なんかあった?」
いい方に?悪い方に?
「別に。パックしたからかな」
嘘で〜す。
「え?どこの?私も欲しい」
「そんな物、しなくても充分艶々してるじゃない」
「いやん、解る?彼がね、フフ、愛してくれちゃって」
…結局、それに話を持って行きたかったんでしょ。
「あ、そう言えばね。涼葉、別にもうどうでもいいだろうけどね、私、今朝、課長見ちゃった。前に話したでしょ?綺麗な女の人の事。あの女の人と一緒のところ」
今朝。…朝。
「…へ、え。…何だか…課長と、そんな時ばっかりなんて…」
これ以上、上手く言葉は出ない。動揺しちゃう。
「そう。これは、あれね。遠回しに私には課長との運命はないって、言われてるのよ」
「彼が居るんだから、いいじゃん」
「そうなんだけどね」
何だろう、ざわざわドキドキする。課長の知らない事がまだあるって…それを言われる…前ぶれのような気がする。