どきどきするのはしかたない

「課長は口は堅いと思いますよ。さっきの話は、独り言ですから。私が盗み聞きしただけです」

「…そうか、…何だか、すまなかった。それから、有難う」

「私は、冷たくて冷めた人間なので…。人の事より自分本位なところがあります。だから、…表面で、何も無かったように振る舞う事は出来ると思います。…仕事なら。だけど、どこかで…まだ子供なんです」

「うん、まだ若いからな。色々経験が足りない」

「…はい。…はぁ」

「特に、辛い事に対する免疫、経験がな」

「はい」

「仕事をするというなら、仕事をしろ」

「はい」

「その変わり、暫くの間ミスがあっても、理解はするから。…表面上は叱るけどな」

「はい…」

「早く出社していたから、今日は結構話せたな」

「え?あ、はい。そうですね。課長はいつも無駄が無いですから」

「それは遠回しに、遊びが無いと言われてるみたいだな」

「いえ、違います。課長はきちんと物事を分けて考えられる人だと思います。仕事の時は仕事。仕事にプライベートは持ち込まない、そんな風に見えます。
すみません、課長に生意気な事を」

「仕事にプライベートは持ち込まない、か…。
…いいさ。今まで、俺の性格を分析してくれた奴はいなかったからな。
その分析が合ってるか合ってないかは、つき合った人間にだけ解るって事だ」

「そうですね」

「…じゃあ、そろそろ仕事するか」

「はい」

「あ、本当に何か言われて辛くなる日があったら、休んでいいからな?」

「はい。あるとするならです。言われてから考えます。その時は休むって、直接課長に連絡しないといけなくなりますね。前回のように“代理人”からって訳にはいかない状況になるでしょうから」

何か言われる張本人ですから。

「そうだな」
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