どきどきするのはしかたない
「涼葉の話は無しって事でいいよな?」
…また暫く保留って、しておいた方がいいのかな。うちの課長の独り言が本当なら、はっきり解るその日は必ず来るって事だから。
だけど、それと、私の気持ちは別なんだ。
課長に甘く愛されて、決めた気持ちを流されていては、私には気持ちなんて無い事になる。ただの腑抜けだ。容姿のいい男の人に、満足がいくように…、ただ抱かれられたらいいって事になる。それは、感情は無くていいって事にもなる…。
…。
「課長、私…、課長とは終わりにしたいんです。それを話したくて来たんです」
「何が不満?」
「…不満?課長に不満なんてありません。そんな事を言ったら罰が当たると思います。
私の問題なんです。私は、課長が言うように家事から逃れたいと思っているような女です。適当に出来ればいいと思ってるんです。
課長のようにきちんとした人とは、いくら好きだと思っても無理なんです。これは、今更です、初めから解っていた事ですね」
「だから出来なくていいって言ってるだろ?
…同じ話を何度したらいい…。出来なくていい、今のままで構わないと言っている。それで駄目だ、終わりにしようって、何がある。
思っている事はそれじゃないだろ?何だ」
…もっと本題があるだろって事だ。
「課長の解らない部分が、信じられないからです」
「解らない部分とは?」
…。
「…最近、同僚が、課長が綺麗な女性と歩いているところを見たと言っていました。朝の事です」
「それが?」
「その人は誰ですか?」
あの女性ですよね?
「仕事上の事だ、詳しくは話せない」
「仕事関係の人だって言ったら、何でも収まると思っていますか?」
「何をそんなに怒っている?仕事の事は仕事の事だから、その性質上、話せない事だってあって当たり前だ。会社に勤めている人間なら解ることだ」
…確かにその通り。
「言い分は解ります」