どきどきするのはしかたない
粒の大きな雨だ。
薄着の服はもう透ける程濡れていた。
前を腕で隠した。
「…このままでは帰れないだろ。とにかく部屋に戻ろう。な?」
「…はい」
また部屋に戻る事になるなんて…。
部屋に入ったら課長がシャツを出してくれた。
これに着替えて、そっちは乾かそう。そう言って、着替え終わった服を乾燥機に入れに行った。
「短くセットしたけど大丈夫だったかな。あれってデリケートな衣類だろ?」
「あ、…フ。はい。低い温度で短い時間なら大丈夫だと思います」
「そうか」
何だか、こんな生活感のある話は初めてだ。
「濡れたな…。あー、こんな時間だけど珈琲でも飲むか…。
ミルクティーとかにしようか?寒くないか?濡れたしホットにしようか?」
課長が濡れたシャツを徐に脱いだ。
…あ…こんな時に、私は…。
露わになった課長の上半身をまじまじと見てしまった。…さっきまで見てた裸なんだけど。
課長の身体はとても綺麗だ。
女の人が嫉妬しそうなくらい肌理の細かい綺麗な肌をしているのだ。
…初めて裸で抱きしめられた時も思った。抱きしめられる度、しっとりと吸い付くような感触の肌…。
「ん?」
「あ、あ、何でも無いです、冷たくていいです、私がします」
こんな時に、私は何を…はぁ。
「そうか。じゃあ頼むよ」
お湯を沸かし、以前にしたようにたっぷり氷を入れたグラスにそれぞれ注ぎ入れた。ポーションタイプのものは便利だ。
冷たいお水でいいのだが、私はお湯を注ぐ方が好きだ。
課長の座る前に持って行って置いた。
何となく、所在無く立っていたら、手を引かれて隣にストンと座る形になった。
「今更遠慮するなんて可笑しいだろ」
「…でも」
「さっきは、さっき。今は、今だ。俺は大人だって言っただろ?」
「…はい、すみません」
「急に他人行儀になるな、な?」
頭を撫でられた。
「あ、…髪の毛、思ったより濡れてるな。そうだよな、服が濡れてるんだから。
気がつくのが遅かったな、悪い。ちょっと待てよ」
課長がタオルを持って来てくれた。頭に掛けられた。
「…有難うございます」
押さえるようにして拭いていた。
「…そんな風にして拭くもんなんだな」
「え?はい。一応、ガシガシとは拭かないようにしてます」
「そうなんだな」