どきどきするのはしかたない
「一緒に居るっていいもんだろ?」
「え?」
「だろ、じゃないな。いいもんだな。こうして涼葉のしている知らなかった事も解る。
…嬉しいよ」
課長…。惑わせないでください。
「あぁ、涼葉の珈琲。いい、俺が持って来る」
私がと腰を浮かしかけたら制止された。
「ごめんごめん、強引に座らせたから」
「…有難うございます」
「だから、そんなのはいいから」
「でも…私、さっき色々言って帰ったんです。なのに…」
「俺は子供じゃ無いんだ」
「はい、すみません」
…。
「あ、課長、髪の毛から滴が…」
会社とは違う、無造作な短髪の先から滴が落ちた。
自分の拭いていたタオルで課長の髪の毛を拭いた。
…。
ゴロゴロ…。
雷…まだ遠いかな。…嫌だな。
いきなりだった。ガラスが震える程割れんばかりの音が轟き、閃光が走った。バチッと音がした。フッと明かりが消えた。
「キャー、課長!」
「大丈夫だ、落ち着け」
ドーン、バリバリバリ。立て続けに轟いた。
「課長ー!嫌…怖い…」
「大丈夫だ。ここには落ちたりしないから」
どこかに落ちた。停電、してるからな。
怖くて必死でしがみついていた。
ゴロゴロと音が遠くなってきた。
「涼葉…、ブレーカー上げて来るから…」
背中をトントンされた。
「あ、あ、はい。ごめんなさい、…いつまでも…」
身体をゆっくり離された。
「…いいから」
課長が薄暗闇の中、廊下に出て暫くすると、明かりが点いた。
「珈琲、零れてないよな?」
「あ、はい」
ガシャン。
「…すみません、…今、倒しました」
「フ、ハハ、解った、大丈夫だ。直ぐ拭くから」
ドキドキしていた。動揺していた。
だから手がグラスに当たってしまったんだ。