どきどきするのはしかたない

「一緒に寝ても何もしない。嫌なら俺はソファーで寝るから」

「課長…」

「こんな時の分別はあるつもりだ。どうする?豪雨の中、びしょ濡れになっても帰りたいなら帰ればいいし」

私に選択しろという事ですね。

…。

「泊めて頂けますか?」

「いいよ。…フ、まだ…少しは信用されているんだな」

課長…。自虐ですか…。

「もう髪は大丈夫か?ドライヤー使うか?」

「いえ、もう大丈夫なくらいになってます」

「では、寝るか」

「…はい」

グラスを片付けて、リビングの明かりを消した。


…ベッドルーム。

シーツも布団もグチャグチャになったままだ。何だか…現場って感じで、生々しい…。

「あ、待てよ。シーツを替えよう。汗で濡れてるからな」

課長…それ、とても生々しい発言です。


課長は手早く剥がすと新しいシーツを取り出し敷き直した。

「よし、OKだ。…どうぞ」

…何だかややこしくて長い夜になった。善意で居させてくれる知らない他人の方がましかも知れない。


ダブルベッドに微妙な距離を置いて横になった。それ程端までは行けない。

「…課長。あの、お願いがあります」

「…何だ?」

「明日、会社を休みますので、うちの課長に伝えて貰えますか?」

「あぁ、それはいいけど、…具合が悪くなってきたのか?濡れたから熱でも出てきたか?」

「違います。それは大丈夫です。心配は要りません。
朝、ちゃんと部屋に帰ります。…ずる休みです。課長を前にして言う事では無いですね」

「じゃあ、雨に濡れたし、風邪にしておくか…」

「はい…何でも大丈夫だと思います」

私本人からの連絡じゃない事に、何か気がついてくれるかな。

「ん?そうか?」

課長から借りたシャツは大きい。
ゴソゴソとスカートを脱いでベッドの下に落とした。
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