どきどきするのはしかたない

「…解った…。ただ眠そうな顔って事ですよね?」

そんな事自分から言ったら、雷が恐くて眠れなかったのか…別の理由なのか、穿鑿されないかな…。

「…どうかな」

やっぱり、まずかったかな。…でも、…そのまま帰って来てるとは思って無いだろう。そんな事は、…課長じゃないけど、帰って来た私の様子を見ただけできっと解っていると思う。
ベッドに下ろされた。

「私は人を見る目がないのでしょうか…」

「それを…俺に言う?」

「あ、ち、違います、誤解です。客観的な話です。誰がという事では無いんです」

「誰だって見誤る事はあるだろ。あ、客観的な話ね。誰がどんな人間かなんて、本質が解る奴なんていないだろ。
それに、自分の事を解ったようにだって言われたくない、そういうのだってあるだろ」

…。

「俺の事、解る?」

「全然?」

「な、は、…フ…な?…そういうもんだろ?…ハハハ、…面白い。解らないか…賢い返事だな。…なるほど」

「え?だって…、本当に何も知らないでしょ?前にも言いましたけど、ワーッて、何かいつもして、…嵐見たいに」

「フ、…そうだな」

「……私、自分の部屋に帰ります。…その方がいいでしょ?」

「…人に気持ちを委ねるなよ…」

「え?」

「帰りたいなら、帰る、でいいし。居たいと思ってるなら自分から居たらいいんだ。
人に決めさせるなよ。
これは私の責任じゃないです、みたいなのは止めた方がいいな」

何だか、空気が悪くなったような気がしたから言ってみたのだけど。…そうか。…私の意思でこの部屋に帰って来たんだ。
言われてたからって事にしては意思が無い…。

「では、居ます」

「ん。…俺だって、嫌なら帰れって言う。入れなんて最初に言ったりもしない。
…ベッドになんて運ばない…」

うん…、七草さんなら、はっきり帰れって言うだろう。

「愛徳…、もっと、…近くで顔を見せてくれ…」

抱きしめられているし、今でも顔はまあまあ近いところにあるけど。
簡単にキスでも出来そうなくらい近くまで寄せられた。

「…最悪、朝になっても、帰って来てくれたら、それでいいかと思っていた」

話すと息がかかる。煙草の匂いが少しする。
この部屋を訪ねたって事はそういう気持ちで帰って来たという事になるから。
顔を会わせられない気持ちになっていないという事。

「うんと早めの朝だったから、まだマシでしたか?」

「ん゙ー。んー、…心配した。話を切り出せ無かったら、そのままただ流されてしまうんじゃないかってな…」

…それが、…何ともなところなんです。言いましたけどね。

「雨が振る境目の時に、丁度、マンションを出たようになってしまって。
直ぐ、凄い雨になったから…」

「それで大人しく一晩…“雨宿り”してたって事か」

煙草…、待っている間、何本も吸ったんだろうか。

「あ、はい。雨が上がったから、直ぐ帰って来ました」

「愛徳…」

近かった顔のままキスをされた。

…?……続きは?…しないのだろうか…?
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