どきどきするのはしかたない
…七草さんかな。七草さんなら、こんな風に来ないか。
あ、でも、サッシも鍵はしてある。玄関だって鍵は忘れずしている。
…え、…課長?
ピンポン。
「あ、はい」
カ、チャ。
「涼葉」
「課長…あ、どうして?」
「終わった。だから来た」
「え?…あ」
「入ってもいいか?」
…。
「駄目か…」
「あ、…いえ、…どうぞ」
「ん、ではお邪魔する」
「…はい」
心臓が早鐘を打ち始めた。ドキドキが鳴り止まない。
「掛けてください。今、紅茶を入れますから」
「そんなのはいい…」
「直ぐです」
…。
課長に紅茶を出し、自分も飲みかけていたカップを手にソファーの端に腰掛けた。
「終わったんだ。明日、三課の課長に辞令が出る。子会社に出向という形で左遷になる。
それから役員が一人、解任される」
「え?」
何が何だかさっぱりだ。それが結末って事?
「詳しい事は言えないし、知らない方がいいと思う。ただ、解任される役員は良くない政治家との繋がりがあって、それに関しては詳しくは言えないけど、手先のような事を三課の課長がさせられていたという事だ。
まだ小さい子供が居るのに、はぁ、仕方ないのかな…。
たまたまだとは思うんだが、浮気現場をその役員に見られたようなんだ。それで、不倫だ、浮気だと、弱みを握られて。…奥さんが妊娠していた時期の事でもあったし。何だか、やり切れない気になる…」
「それで…」
「ん?何もかも、俺の役目は終わった。後処理も終わった。晴れて自由の身になった。
だから、真っ先に涼葉のところに来た」
「…課長」
「ん?」