どきどきするのはしかたない
「…私、どうしても…本当の事だと言って聞かされた事の、…本当が知りたいんです」
「ん?急に何だ、どういう意味だ?意味がよく解らない。何の事だ」
…何もかも終わったと明るい表情で現れた課長に、私はまた蒸し返すような事を投げ掛けてしまった。
「そんなに解らない振りをして誤魔化さないでください」
「何が知りたいんだ?」
「…課長と、元結婚相手、今の今まで偽装結婚を装っていた女性との…」
「何だ?」
課長の顔が雲っていくのが嫌でも解った。いい加減にして欲しいと思っているかも知れない。
「…男女の関係…です。課長と、その女性との間にあった本当の関係です」
…。
「それは何も無いと言ったはずだけど?会社で一度抱きしめられただけだ」
「それが本当だって、本当に言えますか?」
「ああ、言える」
「…神様に誓って?」
「ああ、神様にも仏様にも誓って言える」
…そんな言葉は…言える。
「あんなに課長の事を好きになってる人、そうなる事があったからでは無いのですか?…。
気持ちだけで…、あんなにならないと思います。
会社にも何度も来たのでしょ?…誰も居なくなった時を見計らって。
…いいんです。私とつき合う前の事にあった事はいいんです。
だから…課長からは、本当の事を言って欲しいんです」
「涼葉。どうしてそこまで思い込んでしまったのか、…きっと俺のせいなんだろうけど。
本当だ。本当に何も無いんだ。
どんなに人気が無くても、何も無い。何も無い事の証明は出来ない。信じて貰うしかないんだ」
…。
「涼葉…、どうしたら信じてくれる?どうしたら俺は信頼を取り戻せるんだ?
…俺よりも、二課の課長や、七草の言葉が信じられるって事か…」
「…え?…課長…」
「俺としては、もうどうする事も出来ないよ。
…好き以前の問題だよな。信じられない人間を好きにはなれないだろうから。
とにかく、偽装結婚の件は終わった。俺と彼女の間には初めから今まで何も無い。そういう事だ」