どきどきするのはしかたない
課長は帰って行った。
この事が終わったら、自然に元に戻れるだろうと課長は思っていたと思う。
だから、終わったというその足で、私のところに来たんだ。
真っ先に来たって、言った。
私…何が不満?何も無いと言っている課長にこれ以上、何を求めるの?
何故、本当だと言っている言葉を信じて受け入れられないのだろう
…可笑しいよ、可笑しいよね、私。
どうしてこんなになってしまったんだろう。
こんなの可笑しい。完全な人間不信だ。
…課長。
「課長ー!…待って、待ってください」
「…涼葉」
部屋を飛び出し、課長を追い掛けた。
歩道を歩いていた課長を呼び止めた。
「課長、…はぁ、課長。ごめんなさい、はぁ、…謝らせてください」
「涼葉、大丈夫か」
息を切らしている私に手を差し延べてくれた。
「私。はぁ、…。課長が本当だと言う事を信じられなくて、だから、ごめんなさい。…はぁ。
今は、それしか、言えません。はぁ。
信じられなくて、ごめんなさい」
「…つまり、それは、信じてくれた、とは違うって事だな。
信じる事が出来ない事に対して、ごめんなさいって事だな?」
「はい、そうです。…謝りたくて。…こんなうたぐり深い人間になってしまって、…今は、どうする事も出来ません」
「…うん。…うん、解ったよ」
「課長…ごめんなさい…酷い事を言ってごめんなさい」
「いいんだ。無理な時は無理だ。納得出来るまでは無理だ。どうしようも無い。な?」
「はい…ごめんなさい」
「…はぁ、…涼葉。駄目だな、俺は。……何もかも。
何で最初に好きだって言わなかったのかな…、不思議だ。好きだって言っていたら、こうはならなかった…俺がややこしくもしてしまった」
「それは、私も…言って無かったですから。……課長を失うのが恐くて」
…。
「…ん、今は恐く無いって事か…」
…。
「俺は失いたく無い。どうやったら涼葉の気持ちが俺を信じてくれるのか…解らないけど、失いたくは無いよ。
この気持ちは変わらない」
「課長…」
「諦めが悪くてすまない。
……追い掛けて来てくれて有難う。嬉しかったよ。…涼葉の方から行動して来てくれるなんて。
じゃあ、おやすみ」
「…はい、…おやすみなさい」
課長…身勝手で、傷つけるだけ傷つけて、嫌な女でごめんなさい。