どきどきするのはしかたない
RRRR、RRRR…。…弁護士さん?
「は、い」
「愛徳さん、今、話せますか?」
「はい、大丈夫です」
「会わせたい人が居ます。大変急なのですが、会えますか?今から。
いつもの待ち合わせのカフェに居ますから」
「え?はい。直ぐ行きます」
会わせたい人って言ったら、あの人しか居ない。
弁護士さん、私の為に?…。
「あ、お待たせしてすみません」
「愛徳さん」
隣で一緒に女性が立ち上がった。
「あの…」
帽子を被り、顔一杯になりそうなサングラスをしていた。
女性は帽子とサングラスを取り、そのまま頭を下げた。
「ごめんなさい。すみませんでした。私、どうかしていました。見境無く、酷い事をして本当にごめんなさい、すみませんでした」
「あの…」
弁護士さんを見た。頷いた。
「…お嬢さんです」
「…、あ」
やっぱり。
「貴女にとんでもない事をして、きちんと謝りもせず、お見舞いもしないで、本当にごめんなさい、すみませんでした」
「あの…もう、私、その事はいいんです。貴女の、女性としての気持ち、解りますから」
女性が、えって顔をして私を見た。緊張していた顔が少し緩んだように見えた。
「あの、それより、ごめんなさい、私、伺いたい事があるんです。教えて頂きたいのです。
話し辛い事かも知れませんが、あの…」
弁護士さんがお嬢さんを見て頷いた。話す事を促したようだ。
「弁護士から聞いて、その事をお話しようと思って。貴女に酷い事をした上に、…私の見栄から言った事で、貴女と晶仁さんが壊れてしまっては申し訳ないから。
知りたい事と言うのは、私と晶仁さんに何も無かったかって事なんですよね?」
「…はい」
晶仁さんて、呼んでいたんだ…。
「私と晶仁さんの間には何もありません。何もしていません。本当です。
私が無いと、嘘をつくメリットはありません。だから余計信じてください。
…何かあったらいいと望んでいたのは確かです。そうなりたくて何度も誘惑しました。
でも晶仁さんは何もしてくれませんでした。そういう…誠実な人なんです。
晶仁さんの事、疑わないで信じてあげてください、お願いします。それから、結婚の話も、残念ながら嘘ですからね。入籍だってしてませんから」
「愛徳さん」
「…あ、…弁護士さん。ご配慮頂いて、本当に有難うございました」
私の、つまらない妄想の上の疑心の為に…。
この女性に、信じてあげて欲しいと、お願いされてしまった…。私なんかより、ずっと課長を信頼している…。
「いえ、どうしても、私の不確かな話のまま、有耶無耶には出来なくて。
…本当は駄目なんですけど」
「父に解雇されたのに、この人が直接私に連絡して来て、どうしてもって、何度も…。
…それに、私も貴女に謝りたかったから。父が、強引な事をして、示談にって…。私は直接謝らないままでしたから」
プライドは高いと言っても、話が解らない人では無かった。示談はこの人の意思では無かった…。
「お話しして頂き、有難うございました」
…。