どきどきするのはしかたない

ピンポン。ピンポン。

「はい。…涼葉。…どうした…」

「はい、…謝りたくて。こんな遅くにすみません」

「もういいよ。謝って貰った」

「違うんです。まだ、謝らなくちゃいけない事があるんです」

…。

「もう会わない方がいい。ここにも涼葉は来てはいけない」

「…解っています。…最後にしますから、少しだけ、時間をください。お願いします」

…。

「解った。入りなさい」

「有難うございます」


リビングに通された。

あ、…。
テーブルの上に郵便物が投げたように散らばっていた。課長は纏めると隅に置いた。
ソファーには洗濯物があった。それも纏めて持ち上げると横の一人掛けのソファーに移動させた。

「座って」

「はい」


温かいココアを入れてくれた。
…飲み物の選択、ベストだ。どんな時も流石ですね。

「どんな事?」

「はい。私、会って来ました。課長の結婚相手の人に」

「違うよ…元だ。…よく会えたな」

「はい。示談の時の弁護士さんが連絡をくれて」

「弁護士と、まだ連絡を取り合うような事があったのか」

「あ、それは…」

…こそこそ調べていた。

「まあ今はいいよ。それで、彼女に会って来たとは」

「はい。お嬢さんが、課長とは何も無かったって、それから、結婚も本当に嘘だって。
それを私に話したかったって言ってくれました。
私に酷い事をした事も、謝りたかったって。
だから、私、課長に謝りに来ました。
信じられなくてその事を謝りましたが、すみませんでした。
課長の言っていた事は本当だと思います。だから、全部、すみませんでした」

…解ってる。信じられないと思った事も他人の言葉、信じると言えるようになった今も、他人の言葉からだ。
…課長基準では無いって事だ。

「…もういいよ」

「は、い」

これで言いたい事は話せた。許して貰いたい訳じゃ無い。
私は酷い事を言い続けてしまった。
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