どきどきするのはしかたない
シャワーを済ませ、ベランダに出ていた。
課長、タクシーで来るのかな。
歩いて来れない距離でもないかも知れないけど。
お酒飲んでいたら車は無いよね。
課長って車は持っているのかな。
そんな事すら知らない。
ただいつも課長と時間を過ごしてそれだけで良かったから。
何も知らない…。
ピンポン。あっ。
ドキッ。…早い。来た、…課長。
玄関に走った。カチャ。
「課長!」
「涼葉。…シーッ。…声が大きい…」
「課長…」
抱き着いていた。…いけない。そうじゃない。離れて顔を見た。
「話したい事があるんです。メールじゃ嫌だったから。どうしても顔を見て、話したかったんです。課長の口から聞きたいんです。顔を見たかったんです。あ」
ん。唇を塞がれてしまった。
「…はぁぁ。涼葉。もどかしかった。…涼葉。メールをしながら、さっきもっと引き止めていたら良かったと思っていた」
ん。また、顔を包まれたまま塞がれた。
「…私も。聞くなら、バーで聞けば良かったと思いました。課長、どうやって来ましたか?」
「朝まで居させてくれるか」
「え?」
「俺はまだバーに居たんだ」
「え?」
「だから歩いて来た」
「嘘…」
「嘘じゃないよ。それに俺はアルコールは一滴も飲んでいない」
「あ、じゃあ、あのいつものって言うのは…」
「あれは烏龍茶だ。大事な話をする時はそうしているんだ」
そういえば…今、口…、お酒の匂いがしなかった。
「…あ、私。…ごめんなさい。何も、本当に何も考えて無くて…」
…会って話をするという事。大事な話だ。…私は全く子供だ。
しかも帰ってまたカクテルを飲んでしまってる。…。
「いいんだ。…涼葉、ほんのりと色づいて、…綺麗だ…。上がってもいいか?」
頬に手を当てられた。
「あ…はい」
抱き上げられた。
「ぁ…課、長…」
「不真面目に言ってる訳じゃ無いんだ。話はベッドでも出来る、だろ?」
「課長…」
「涼葉、好きだ。二課に配属して来た時から惹かれていた。んん、つまり、入社して来た時から俺は好きだったよ」