どきどきするのはしかたない
…え?
「涼葉…」
急な事にびっくりした。ドキドキが鳴り止まない。
向かい合って座ったテーブルの下。
課長は手を伸ばして来て私の手を握った。
「…課長」
「昼間なのに…あの日の涼葉の事ばかり考えてしまってる」
あ、…あの日とは、きっと、もう終わりにしようと言われた日の…、夜の事、かな。
それとも、初めての日?…。
「課長…」
どちらにしても、それは私だって恥ずかしい…。そんな事、今どんな風に考えているのだろう。
やっぱり、色っぽい事だろうか。…。
私達がお店に入った時はランチタイムのオーダーが出来るギリギリだった。
店内のお客さんは、セットメニューの食後の珈琲を飲んでいる人が多かった。
あの夜の事だとして、それを今思い出されたら…、いつもと違って沢山愛されもしたし、情熱的でもあったし…。
かぁ…。大変だ。今思い出してる場合ではない。
あれは…課長が…、最後になるかも知れないからだったと思っているんだけど…。ふぅ。
課長はずっと手を握っていた。
…何だか、好きだって言い続けられているみたい。いい方に感じ過ぎかな。
お待たせ致しました。
そう言ってテーブルにお皿を並べて、ごゆっくりと言って下がって行った。
ハンバーグ、キハダマグロのステーキ。スープ。
それぞれに彩り野菜の甘酢あんかけ、ポテトサラダが一緒に盛られ、目にも美味しいランチだった。
「凄く美味しそうです。食べましょうか、課長」
「…そうだな」
課長は名残惜しげに離すと、テーブルに置かれていたおしぼりで手を拭き、お水を飲んだ。