どきどきするのはしかたない

「…あのさぁ、いや…やっぱり止めとく。今日、一度に色々話したらパニクるだろ?だから止めておく。
別に勿体振ってる訳じゃない。
あー、心配しなくていい。安全に帰すから。
自分で何とかしようとして飛び出さないでくれよ?下をチラッとでも見たら、吸い込まれるように落ちるから…な?」

ゔ、…恐。想像したくない。同じ落ちるでも、こっちは落ちたらきっと助から無い。万が一助かったとしても…長い入院になりそうだ…。

「…お願いします。何の善後策も無く、言われるがまま来てしまった私も悪いのですが、帰る手段が無いので、また、あっちに渡らせてください」

「解ってるよ」

はぁ…、良かった。後は変な雰囲気にならないように、大人しくデザートを頂いて、なるべく早く帰れる事を願おう。


マカロンも頂いた。珈琲も飲みきった。
もう特に居る意味も無い。

「帰る?」

「はい!」

「そんな嬉しそうに…。はぁ、よし、出ようか」

だって、帰れるから…。


ベランダの降り口で来た時のように抱き抱えられた。

「危ないからしっかり持つけど、痛いのは我慢してくれよ」

今更の復路…でも身体が打撲で痛い事も知ってる。

「はい。我慢します」

「…。俺の事も抱きしめてくれ」

「あー…はい」

んー、言われて抱きしめるのも…だけどこれは帰る為だから仕方ない…。
戸惑っていたら中途半端な抱擁シーンが長くなるだけ。
腕を回してしっかり抱きしめた。

「…ぉ…よし。じゃあ、行くぞ?」

「…お願いします」

広げてあった低めの踏み台に上がり、室外機に上がった。
うわ、身体が一気に高くなった。

「いいか、下、見るなよ。俺の高さだと更に高くなってるから」

低く落ち着いた声だった。

「は、い…」

解ってます。詳しく説明しないで。ここは冗談抜きで動揺させない為だ。…解ってます、見ませんから。
でも今そんな事言わなくていいのに。
もっとギュッとしがみついた。

来る時はあっという間で、恐いと思っても余計な事を考えている暇などほぼ無かった。
だから恐くても易々と来れたんだ。

「いいか?下ろすぞ?」

あ、もう大丈夫なの?

「は、い」

……え?…え?まだなの?
足が…着かない。ですよ?
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