どきどきするのはしかたない

真っ直ぐ自分の部屋に帰った。

この頃の暑さは尋常では無い。
帰ると直ぐにいつものようにサッシを開けた。

幸い風が吹いていた。む〜んとしていた空気が段々と拡散されて来て少しはマシになった。

汗を流したかった。服を脱ぎ捨て浴室に飛び込んだ。温めのシャワーを浴びた。…はぁ、気持ちいい。

出て来て冷蔵庫を覗いた。
お水より、今日はまずカシスオレンジ…、え゙っ、…増えて、い、る。いつの間に…え?
……何だか後ろに気配を感じた。
黒い物体が居るような気がした。

…これは、もしかして、無いはずの…、身の危険なのかも知れない。
どうしよう、…襲われる。身を硬くした。

「おい、お帰り、開いてたぞ」

「ひっ。キャ、あ、…あ、もう、…びっくりし…た」

腰が抜けたみたいに一気にへたり込んだ。
まさか、本当にベランダから、開けてるから入って来たって事?

「おい、大丈夫か。風呂に入るなら鍵しとかないと危ないだろ。変質者が忍び込んだらどうする。
こんな奴に侵入されるぞ」

…もう。何言ってるんだか。

「そうです。誰のどの口が言ってるんでしょうか。
それより、これは七草さんが入れたのですか?」

開けたままの冷蔵庫の中を指した。

「そうじゃ無かったら怖いだろ」

…そうだけど。増えてるのが不思議だったから一応聞かなきゃ解らないから聞いてるんです。

「私にくれたって事でいいのですか?」

「ああ、俺は飲まないし、飲むなら別の物を入れる」

もう、一々…。飲むなら入れるのは自分の部屋の冷蔵庫にでしょ。
取り敢えず。

「有難うございます」

「ん」

「…どうしてですか?どうして居るんですか?」

「は?会いたいからに決まってるだろ?
こんな近くに居るのに、帰って来たら直ぐ会いたいに決まってる。
俺は今攻めないでいつ攻めるんだ」

…直球過ぎる。聞くんじゃなかった。……一度きりの…には、してくれないんだ…。

「…だからって、ベランダからは危ないですって…」

「違う。玄関からだ。鍵が開いていた。だからさっき言っただろ?開いてたって。危ないだろって」

「えー、玄関?本当ですか?」

「本当だ。こんな事で嘘を言ってもしょうがない。今はかけてあるからな」

玄関に行って見た。
鍵はかかっていて、見た事が無い大きな靴があった。
どうやら、かけ忘れは本当だったらしい。

「…すみません」

「ご飯は?」

「え?…まだです…」

「だろうな。じゃあ、服来たらうちに行こう」

「…え?…あ、キャッ」

慌てて寝室に逃げ込んだ。

バスタオルを巻いたままでいた事、忘れていた。下だってまだ穿いて無い。
だって…、パパッとシャワーだけでも、また汗が出るんだから。
ここは私の部屋よ。普通それで大丈夫なんだから。それに、出たら人が居るなんて思って無いもの。……も゙う。

「おい、着替え、手伝おうか?」

「キャ、もう…、大丈夫です、来ないでください。解りましたから、先に帰っててください」

「いや、待ってる」

「嫌です。待ってられたら着替えられません」

「信用ない?だったら着替えなきゃいいんじゃない?」

「ぇえ?」

「これ、脱いじゃえば…」

スルッとバスタオルを取られた。

「…キャ!もうー」

ベッドに飛び込んだ。

「じゃあ、俺も」

手早く服を脱ぐと潜り込んで来た。

「キャー、もう…、あっちに行ってください。なんで入ってくるんですか。
変態、痴漢、…出てくださいぃ!」

ぐいぐい精一杯押し返した。……暑い。

…どうして、こうなる。
こんなのは、この人の思う壷じゃないの…。
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