どきどきするのはしかたない

「まあ落ち着け…ん、痣、薄くなってるな…」

押していた腕は握られていた。
…はぁ、そんな、違いは無いと思うけど。高が昨日今日でそんなに解る程、回復はしないはず。
…て、冷静になってる場合じゃない。

「もう、離してください。布団の中で暗いのに…適当な事、言わないでください。早く出てください」

「昨日より悪くなる訳は無いだろ?」

もう…、ちっとも言う事は聞いてくれない。

「そうでしょうけど、そんなに解る程、差は…あ」

「出ろとか離せとか…ごちゃごちゃ煩い。
俺は万能薬だから…、こうして…触れれば触れる程、…回復は早くなるんだ…」

掴まれていた腕を広げて押さえつけられていた。
身体のあちこち、微かに唇を触れさせながら移動していく。
…ぁ、流石にもうくすぐったい。
七草さんにとっては攻めでも。勝手な言いぐさだけど、私は…流されたくない。…昨夜の事は、昨夜だけの事だ。

「…もう、出て来てくださいっ」

ガバッと顔を出した。

「何」

「あ、何って…くすぐったいから、もう止めて欲しかったんです」

「なんだ、そんな事か、…じゃあ、こっち…」

ん。腕をついて、いきなり唇を食み始めた。
…ん。
顔を押さえるみたいに包まれた。何度も甘く食まれた。

「…ん゙。…ご飯、食べようって言ったのに…ん…。こんなの、駄目です」

「俺は駄目じゃないから。…食べるよ?…後で」

もう。…痣の無い身体になってからでも良くないですか?多分、数日もすればもう消えると思うけど。…そういう事では無い。あれは、昨夜の事は、一晩だけの…治療。のはず…。

「皮膚にいいって言うから、ビタミンBとか摂らないとな。だから今日は、豚肉の生姜焼き、レバニラ炒め…、枝豆の冷奴、珍しいだろ?緑の豆腐。
それから、ナッツのいっぱい入ったパウンドケーキだ」

私の為の特別メニュー?わざわざ?…夏に良いメニューが偶々私の回復にもあってたって事じゃないの?
それ、誰が作ったのだろう。…聞いたらまた家政婦さんて言うつもりだろうか。
…私、その家政婦さんと言っている人の関係性、確認もしないであんな事…、そしてこんな事されてる…。
大事な事なのに、…聞かなきゃ。

「あの、それはまた家政婦さんが?」

「…そうだ」

…。

「その家政婦さんとは、どんな関係なんですか?」

「…あ、は?どんなも何も、…家政婦は家政婦だろ…」

「それは…何でもしてくれる人なんですか?」

「は?何でもって、何だ…。頼んだ事しかしない。そういう契約にしてる。まあたまに余計な事までしてる事もあるか」

…契約。頼んだ事…。余計な事…?

「おい。さっきから、何、眉間にシワ寄せて聞いてる。家政婦は家政婦。純粋に仕事だけをする家政婦だ」

…仕事…?どんな?…。
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