どきどきするのはしかたない
「…ご馳走様でした。美味しかったです。今回は私に片付けさせてください。せめてもの、お礼です」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫です。あー、こっちに来ないでください。二人分は直ぐ終わります。手伝いとか、いいですから」
手伝うとかより、傍に来られると身に危険を感じる…。
「そうか…。で、どうする?」
「…終わったら帰ります」
…当たり前です!…どうする、だけで意味を理解して返事をしている自分はどうなんだか…。
「…そうか」
そうです、何だかごめんなさい。
「はい」
洗い終わって手を拭いていた。
「お笑いのDVDとか、観ないか?嫌いか?」
首を振った。
「嫌いじゃないです。でも今日はいいです…」
「そうか。今日は何を言っても駄目か…」
「…ごめんなさい」
「いいんだ、…真面目になるな。…落ち込む」
…真面目になるなって。…そっちは、本心は真面目で言ってるのでしょ?だからとにかくごめんなさい。
「では、帰ります」
「ん」
玄関まで来てくれた。
「じゃあな」
……、あ。
「これは俺の都合」
抱きしめられた。
「気をつけて帰れ、な~んて距離じゃないのが、逆にきつい」
「…おやすみなさい」
はぁ。部屋に入るなり、冷蔵庫のカシスオレンジに手を伸ばした。
この為にくれてたんじゃないかと思ってしまうほど、予めのタイミングが良過ぎる。
これも、こんな私になるって、知ってたって事?…。解るはずがない、偶然よね。
タブを開けて飲んだ。
…。何にも解らない、考えたくない。…はぁ。
ベランダに出た。
今夜は曇ってるんだ…。
はぁ。本当に何も考えないでいてみようかな…。
無理にどうこうしようとしてもできる状況じゃない。
…はぁ。落ちそうで落ちないくらいの幅の手摺りに缶を置いた。危ないのは危ない。
手摺りに腕を掛け、もたれた。…はあぁぁ。
「結局、そうしてるんなら、まだ居れば良かっただろうに」
「…えっ?」
外に出てたんだ。行動を読まれているのかな。
「別に、一緒に居るからって、無理矢理襲ったりはしないのに」
「…うん。でも、そっちの部屋に居るのとここでは状況は違います」
…あ、うんて言っちゃった。