どきどきするのはしかたない
このまま…、七草さんに甘えてしまうという事が、どうなるのか、そのくらい私でも解るつもりだ。
それは課長との事、冷却期間とかではなく、終わらせてしまう事に成り兼ねない…。
…私は流され易いのだろうか。
それとも、浮気性?八方美人的に、いい男を掴まえようとしてる?
「こうなったら、網でも掛けておかないと駄目なんですかね。
ほら、ごみだって、散らかされないように、ネットを掛けたりするじゃないですか。
こんなのは…、私はベランダにもうかうか出られないって事になります」
「そうだな…。言っとくけど、ネットなんか何の役にも立たないぞ?
それに、俺はカラスじゃないんだから。
人間なんだ、突くどころか外せるんだからな」
「もう…解ってますよ。…言ってみただけです、妨害です」
「知ってるけどな」
…。
「…あの、課長と、踊り場で話をしていた時、もしかして、下に居ましたか?」
「…居た」
…。はぁ。あの煙草の匂いの主はこの人だったか。
「…もしかして。夜、課長のマンションから、私が出て来て…。雨の中、歩道で後ろからぶつかったのは…」
「…勿論、俺だ」
…。
「よく、俺じゃないかと思いついたな」
「今となってはって、ところからです。
七草さんが、私の事は知ってる、知ってるって言うから…思い当たるじゃないですか」
「俺の知ってるって事は、別にストーカーを敢えてしてって訳じゃないからな。…偶然だから」
「偶然を装ったのもありますよね?」
「資料室のはな。…困ってるだろうと俺が勝手に思ったから、わざと用のある振りをして愛徳を呼んだんだ」
「あの時のは…、正直助かりましたけど…。
余計な事では無かったです」
「…まあ、どっちでもいいんだけど、俺的には」
「…あの、もう随分長く、この状態のままなんですけど」
駄目なんだけど、妙に居心地が良くて、腕の中に居たままだった。
「気がついたか。あ、なんなら、俺、こっちに泊まろうか?」
「…何言ってるんです、なんならって、なんですか?…私、確かに、七草さんに…」
「あぁだから、それ以上は今は言わないでくれ…頼む」
「あー…はい」
「色んな事、今は考えないんだろ?だったら、俺にも言わないでくれ」
「…はい、でも、これでは…ぁ」
考えない内に七草さんが入り込んでしまう…。でも、それが七草さんの攻めだ…。そして私はどこかで狡く甘えている。
唇、塞がれてしまった。また何か言うと思ったからだろうけど、こんなのは…少しずつ侵食されていく元…になる。
「…喧しい。何にもしないって言っても、しつこいと塞ぐしかない。
で、今夜、俺は寝てもいいの?」
はぁ、もう、何を…ちょっと可愛く聞いてるんだろう。
今こんな事されたばかりで、どうぞなんて無いでしょ?
「よくは無いです。…だって、そんな関係は…」
「だから、言ってしまったら駄目だって」
…聞きたく無い気持ちは解りますけど。
「はぁ、…ずっとこうしている訳にもいかないじゃないですか…。
…離してください。私は寝ます。
…後は、七草さんが、好きにしてください。あ。好きにってそんな意味じゃないですからね」
離してくれた。