どきどきするのはしかたない

…あ。離してくれたけど、手は繋がれた。

「もう、自分の部屋に戻るなんて無理だからな。だから、一緒に寝る。
だけど抱きしめて寝るだけだから、…約束する」

「いいですよは言いませんよ…」

「ん」


結局、一緒に寝る事になった。…なるよね。

私が、この人のところに行って甘えてしまったから…。
七草さんだってずっと抑えて来たモノ、もう隠そうともしなくなったし。

「何でも無いように思うかも知れないけど、どうしようも無い時、虚しい時、人の温もりがあるって、不思議と何も考えず、眠れるもんだぞ?
これは一人では無理だろ?」

そう言いながら、宣言通り抱きしめられてしまっている。
…確かに。一人で何も考えないで居ようとしても、ぐるぐると思いが巡って、ただ迷宮に入り込むだけで、その先に答えは見えて来ない。
考えようとするだけで、ただ悩み続けるだけ。

そんな時にこの温もりだ。とにかくよく解らなくても寝られる気はする。
それは、七草さんにとっては失礼な態度になってしまうのかな。
もっと俺に本気でドキドキしろよって…。

警戒も何も…、攻めて来てるのはそっちからで、…私がいけない部分もあったのはあったのだ…。

「いいのでしょうか、こんな風にしていて…良くは無いのですが。
何を聞いているんでしょうか、私。拒否しているのに。これは軽い脳のパニックだと思います」

抱きしめるだけなんて言われたって、…抱きしめられているんだ、ドキドキしない訳は無いのに。

「フ。難しくするな。まあ、今は深く考え無い事だな。
敢えて言うなら…昨夜より冷静になってしまったって事だ」

うん…やっぱり、…衝動ってやつですよね。はぁ恐ろしい。
…ごめんなさい。最低な女です。

「した事はした事だ。そうしたかったんだから仕方ないだろ」

ゔ、…そう、で、す。
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