どきどきするのはしかたない
課長と、どんな気持ちで始まったのか、始まってから、どんな思いでいたのか、思い出していた。
見てドキドキしていただけと、あの日以来、始まった、身体の関係のあるドキドキ…。
…はぁ。どれだけ心臓が飛び出しそうになった事か…。
課長の部屋に誘われて、課長の使っているバスルームを使い、これからしてしまうんだと思っていたら、先にシャワーを済ませていた課長が迎えに来た。
迎えに来たっていうのも変だけど、あまりに長いから心配になったって言われたんだ。
構わないなら俺が連れて行くよ、と声をかけられた。
身体にバスタオルを巻いただけの私は、バスルームの外に居た課長に徐に抱き上げられてしまった。
『恥ずかしいな、本当は待ちきれなかったんだ』と言われたんだ。…課長。
あんな言葉、本当だったのかな。課長は大人だからなぁ。今になってみたら、その言葉で上手く気持ちを高ぶらされたのかも知れなかった。
でも私はその言葉、そのまま受け止めたな…。だからドキドキが止まらなくなった。
ベッドにゆっくり寝かされて、どうしたらいいのか、ど緊張で、下ろされたままで固まっていたら、『もしかして初めて?』と聞かれた。
初めてでは無い。だけど、初めてみたいな気持ちだった。課長に対して好き過ぎて、無垢な気持ちだった。
私は今、憧れの課長とベッドに居る。そして、私の頬に触れている課長のこの手は、これから私の身体に触れていく。
そう思ったら、どうしようもなくドキドキして恥ずかしくて、それに、嫌われたくないっていう恐さみたいな不安と、とにかく、ぐるぐると困っていた。困る?それとはちょっと違ったか…。
寒くはなかったけど課長が布団を掛けてくれたんだった。
そして、抱きしめられた。暫くそのままでいた。
課長は駄目だったら今日は止めようと言った。駄目なんかじゃない。課長とする事…、それがよくなかったと思われたら…それを思って不安なだけ。
正直に、その気持ちをたどたどしく伝えた。
じゃあ、いいんだね、って言われたから、はい、お願いしますって…、何だか、仕事を頼むみたいに言っちゃって。…クスッと笑われた。
そういうところ、純粋で何だか可愛いな、そう言われて唇が触れた。…柔らかくて、温かい…優しいキスだ。そう思っていたら、身体に巻いていたバスタオルは合わせから開けられていた。手が…肌に触れた。
あっ、て、思った声は声にならず、資料室でされたのと同じ、それよりもっと蕩けるような口づけを長く繰り返されていた。…はぁ、…恥ずかしいけど、…こんな気持ちいいキス、知らない…課長のしか知らない。…身体がトロトロに溶けた…。
堪らなくなって、また、資料室の時みたいに課長の身体に腕を回していた。
ん、涼葉。…涼葉って呼ぶよ、って。
私が初めて涼葉って呼ばれた瞬間だった。