どきどきするのはしかたない
手を引かれた。引き込まれたと言った方が正しい。きっと心変わりしない内にって事だ。
捕まえたら離さない…。…クス、…はぁ。この人は多分…可愛らしい人だ。
…こうしてご飯を食べるだけって言われても…良くはない…。
「ん?早かったけど遅かったな」
「え?あ、はい。まあ、明日祝日で休みなので、やるだけやっておこうかなって、思う物があって」
「ふ〜ん。あ、手、洗う?洗ったら座って」
「あ、はい」
え?エスコートも大概だ…。
…お手洗いの蛇口みたいだ。
言われるまま、手を洗おうと蛇口の下に手を出せば、レバーを操作された。…自動に出たようなものだ。手を拭こうとしたら、タオルを渡された。
…。
「あの」
「ん?はい、座って」
…椅子を引かれた。
「今日みたいなのは、もうしないでくださいね」
「何を?」
「何をって…、言ったじゃないですか、頭に手を置くとか、そんなのです」
「駄目だったか?」
「…駄目だったかなんて、だから駄目に決まってます」
「それは人目があるからか?」
「そうです、ぁ」
完全にわざとだ。頭に手を置かれた。
ポン、ポン、と、された。
「人目が無ければいいのかって、言わないでください、か?」
「…はい、そうですけど」
…もう。
「俺的には問題無いし」
…それも言うと思った。
「私的には問題があるって?」
それも、言わなくても言われると思った。
「その問題って何」
「何って…何か、関係があるのかって、思われますから」
「関係はあるだろ」
…もう、解ってます…言うと思ったし、…それは踏まえての事です。
「だから、それは…違う意味での関係の事です」
「人がそんなに気になるか?」
「え?」
「俺が愛徳にしただけの事だろ?…勝手にしてるって、顔、しときゃいいだろ」
…。
「驚いて、迷惑そうな顔しときゃいいんだよ。それだけの事だ」
…。
「親しくないなら、なんですか?って強く反発すればいい。知ってるからって妙に受け答えしたら、動揺して何口走るか解らないだろ?冷静なくせに…不意打ちには弱いからな」
…。関係があるから、って、思ったから困った。そうなんだ。関係ない人からなら、ビックリして驚いて、…多少声を出して反論する方が自然だったんだ。馬鹿正直だから、そこまで出来ない。思いつかなかった。…はぁ、もう。本当、対処に瞬発力があればいいのに。
「もう話は終わり、食べるぞ」
「…はい…頂きます」
何も返す言葉も無く聞いていたら、いいのかどうなのか解らないところに着地してしまったまま…。
人の目というのは、見たモノを直ぐ噂にするのに…あ。…そうだ。
ただの噂止まりって事ではあるのか。