どきどきするのはしかたない
「不安なら止めとけば?」
「え?」
「そう言われたい訳じゃないんだろ?どうせ言われるなら…そんな事は無い、大丈夫だ、って言われたいのか?」
「それは…」
人ってそれを無意識に求めがちだけど。それが気休めだって事も知ってるけど。
「そんな事は自分で感じろ。見え見えの慰めなんか言っても無意味だ。
俺が良く言っても悪く言っても、自分の感情と違ったら何の意味もないだろ。それに俺の立場を考えたら俺は俺に優位になるように言うかも知れない。
そのうちきっと駄目になる、止めとけ、と言ってそうなるなら、俺には好都合だ。…言われたらそうするのか?
考えるのは愛徳自身だろ?好きだという気持ちがあるなら、何があっても諦めたりしないだろ?嫌われてる訳でもあるまいし。
そもそも俺と、課長との事を話す意味が無い」
…。˝何˝があってもか…。はぁぁ。聞き流せない単語だ。
「食べたら直ぐ帰るんだろ?後片付けはいいから、もう帰れ。長居しないのが愛徳の為だろ?
さあ…帰った帰った…」
「あ、…え、ご馳走様でした。ごめんなさい、そのままで」
「いいから…、あぁ、バッグ」
「あ、はい」
立ち上がるとバッグを渡され、背中を押すようにされて玄関まで来た。
「…教えといてやろうか?
当たり前の事だけど、俺が愛徳の頭をポンてした時、課長は見てたからな。
他の奴の見方とは違う、はっきりそういう目でな」
「あっ」
「二人の事なんか、俺はどうなろうと知らない。一緒に居たいなら居ればいいし、終わらせるなら終わらせばいいんだから。俺は攻めるだけだって言ってるだろ」
抱きしめられた。
「…愛徳。だから頭も触るし、部屋にも呼ぶ。狡いと思われようが、こうして抱きしめる。
…じゃあな」
あ、ドアから押し出されて鍵をかけられた。