特別な君のために
「そうは思えないけど」
みんなをぐいぐい引っ張っていく、サバサバ系女子のなるみ。
頭の回転が速くて、てきぱき動いて、何でもサクサクこなしちゃうなるみ。
笑顔の絶えないなるみしか、私は知らない。
「だって、高校に入ってから変わったもん。このままじゃダメだって」
「そうだったの!?」
同じだ。私も千春のことを知らない生徒が多い学校……ちょっと遠い進学校であるここを選んだのだから。
「まーそれなりに中学時代から勉強は頑張ってたし、友達と付き合わない分、勉強する時間はたっぷりあったからね。帰宅部だったし」
「そういえば、中学校では合唱の経験がないって言ってたよね」
「うん。小学六年の夏までいた小学校では、合唱同好会に入っていたの。だから、合唱はそれ以来かな」
「そっか……苦労したんだね」
「まあね。それは美冬も一緒なんじゃないの?」
一緒、というのは、私も妹のことで苦労したということを指しているのだろう。