特別な君のために

「そうかも。私達、苦労人だね。どこか影があるから、お互い気が合ったのかな」

「あ~、わかるわかる。家族で苦労しているから、せめて友人関係では苦労したくないな、なんて思ったら、悪口を言わない、それなりに真面目でしっかりした友達を選んじゃうよね」

なるみは、絶対に他人のことを悪く言わない。たとえ部活をサボる下級生がいても、サボる行為は悪いけれど、人格を否定するようなことは一切言わない。

だから、下級生からも慕われるパートリーダーだったりする。

レギュラーの座が他のパートよりずっと少ないソプラノは、ともすればいつだってドロドロした女の闘いが勃発する、厳しいパートだ。

だけど、いつだって和気あいあい、のびのびと歌えるのは、なるみの力が大きい。

だから部長の譲君も、五十嵐先生も、なるみに必ず色々な相談をもちかける。

それだけ、みんなから信頼されているということなのだろう。

そんななるみと今、ようやく色々なことがわかりあえた気がする。


私に打ち明けるのも迷ったに違いない。

でも、なるみは信頼して私に話してくれた。

それはたぶん、私が千春のことを打ち明けたから。
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