特別な君のために
そんな時、ちょうど良いタイミングで、機内サービスのワゴンが来てくれた。
「玉ねぎスープ、お願いします」
私が頼むと、なるみも同じものをお願いした。
こんなところまで同じにしなくてもいいのに。
「奏多先輩と同じ大学を目指すんだもんね。進展があったら真っ先に私に教えてよ! 楽しみだわ~!」
「玉ねぎスープ噴くからやめて」
「あれ、否定しないのかな~?」
「だ~か~ら~! やめてくれないとなるみの膝の上に噴くからねっ!」
「はいはい、全くもう、可愛いんだからっ! 素直に認められないお年頃なのね」
やっと、飛行機の呪縛から離れられたと思った私達だったけれど、甘かった。
気流が乱れているとか、雲の中で揺れるとか、そんなことを放送される度に、私となるみは手汗を拭きながら祈る。
「天国のお父さん、まだ連れていかないで~!」
「こんなんで連れて行かれる訳ないでしょ!」
「だって、さっきよりも揺れる! 落ちる! 気持ちわるっ!」
「だから、韻を踏む余裕があるなら静かにしようって!」
「そんなこと言って、美冬だって怖いくせに。素直じゃないんだから~」
着陸の時にもまた、さっきのようなやりとりを繰り返し、五十嵐先生にじろりと睨まれることになってしまったのだった……。