特別な君のために
羽田空港からモノレールに乗り、電車を乗り継いで品川のホテルへ到着した。
受験生ということで、三年生は全員シングルルーム。
みんな歌の練習以外は、ひたすら受験勉強に励んでいる。
せっかく東京まで来たのに、何も観光はしていない。する余裕もない。
下級生は自由時間に観光をするらしい。羨ましいけれど、一昨年の私達だってそうだった。
当時の三年生だった奏多先輩も、部屋でひたすら勉強していたと言っていたっけ。
奏多先輩からのメッセージが、ちょうど届いたらしい。
画面を開くと、東京タワーのスタンプが見えた。
『そろそろ着いたか?』
——今、ホテルの部屋に着きました。
『お疲れ。ゆっくり休め……ないよな』
——はい。自由時間は勉強です。観光できないのって切ないですね。
『それが三年生の宿命だ。でも、美冬達の代は、一年の時に観光できただろ。俺なんて、三年の一度きりで終わりだ!』
——すみません。その時は浮かれて東京タワーに行きました。だからこのスタンプですか?
『もちろん。まあ、観光はいつでもできるから、今はコンクールと勉強頑張れ』